遺体修復業としての「湯灌」と「エンバーミング」

遺体修復業としての「湯灌」と「エンバーミング」

このページは下記の書評の一部です。
【書評】死体とご遺体(夫婦湯灌師と4000体の出会い)

 

著者は、介護入浴サービスのしごとから、湯灌業を始めた異色経歴だけど不思議なことにだんだん、湯灌を通して人の命に面と向かって向き合うようになっていきます。だんだんと、この仕事に「誇り」を感じているのが分かるのがおもしろいところです。

 

著者の弁によればですが、最初は、単に「儲かるから」「借金を返すため」始めた「湯灌」だったわけですが、だんだん、故人を「見送る」儀式としての「湯灌」、遺族の心を癒やす「湯灌」に目覚めて行きます。そんな洞察を経て、著者は湯灌とエンバーミングの類似点を説きます。何度かエンバーミングについて、本書では詳しい説明を入れています。

 

湯灌とエンバーミングの類似点

 

「湯灌もエンバーミングも、もちろんただ単に「葬儀メニューの多様化」を意味するわけではない。その背景には「ありきたりでない葬儀」「より手厚く故人を送り出す葬儀」を望む流れがある。」(P16)

 

「私にとっての湯灌は、自分の仕事であると同時に、「遺体を最大限大切に扱う」ための作業である。たとえば、事故で傷んだ遺体が、告別式のそのときまでそのままであっていいはずがない。できるだけ生前の姿に近づけてあげることが、死者を悼む礼儀ではないのか。私はそう思っている。」(P71)


どちらも、死者の身体を清め、安らかな状態にして、家族に引き渡すことが最終的な目的となります。著者は、特に湯灌に宗教的な意味を感じていないようです。
自殺死体、変死死体などを家族の目に触れさせてあげられるほどに回復させるそれも著者の仕事の一つです。

 

本書では、なかなか厳しい実例が載せられています。

 

case1

飛び降り自殺で、頭から脳みそが飛び出てしまった70代の男性の例ですが、
飛び出た目玉を押し込め、頭蓋骨をパズルのように組み合わせ、
包帯で押さえつけて、ひと通り、人間の頭の形を整えて、
家族が面会できるように、遺体を整えていきます。

 

case2

首吊り自殺をした遺体の首には、太いロープの後が残ります。
枕を高くして、顎を引き、できるだけ後が目立たないようにします。
それでも見えてしまうところには飾り綿をU字型に巻きつけて、
葬儀の儀礼のようにして、できるだけ凄惨な現場を想像させないようにします。
首吊りをするなら、家族のことを考えて、太いロープではなく、
細いロープにしなさいと著者は提言します。淡々と書いているので、
冗談なのか本気なのか、全くわかりません。

 

case3

焼死体の場合は、皮膚が焼け焦げて、いるので、一枚ずつ
ピンセットでつまみ剥がし、その後にファンデーションを塗るという。
毒ガス・農薬自殺なら、皮膚は青黒く変色するというのだから怖い。
少しでも遺族の負担を和らげるために、著者は日々奮闘します。

 

これでもか、というほど、凄惨な遺体の描写が続きます・・・。なかなかキツイ本です・・。

 

私のイメージの「湯灌」とは大きく違い、著者は、遺体を修復することをメインの役割として捉えています。先の東日本大震災でも、おもかげ復元師なる人物が話題を集めました。これから必要になるのは、この種のプロなのかもしれない。そういう予感がします。

 

 

ちなみに、「湯灌」が現在の葬儀業界に持ち込まれた歴史はそれほど古くはありません。1980年代だそうです。その頃にはすでに、宗教的な「湯灌」は廃れていましたが、もともと、やはり入浴介護サービスを行っていた人が、葬儀業界にこのサービスを持ち込んだのだそうです。

 

湯灌というサービスの歴史

 

「葬儀の一部をなすサービスとして復活したのは、1980年代のことだという。互助会系の葬儀社にいた人物が独立し、需要を確信してサービスをはじめたのが最初だったらしい。やがて1995年、阪神淡路大震災が起こり、損傷の激しい多数の遺体が生じた。それを見た関西の葬儀社「公益社」が業務の一環として湯灌サービスに取り組むようになったのが、現代に湯灌が広まるきっかけを作った。」(P70-71)


やはり、損傷の激しい遺体を修復する、そして、洗い清めることが、湯灌というビジネスに求められているものだとわかります。このことを考えると、著者が、エンバーミングに特別な関心を持つのも頷けます。

 

ちなみに、著者は、自分が経験した依頼者でエンバーミングを選択した方がどのように処置を施されるのかを観察しレポートしています。著者の場合は、防腐液などは使いませんので、あまり遺体は長く持ちませんがエンバーミングすると、何年も腐敗せずに遺体を保管できるそうです。

 

エンバーミングというサービス

 

「エンバーミングでは単なる化粧を超えて、顔の成形が行われることがある。というより、エンバーミングの真価の一つはそこにある。成形によって、故人の顔が生前の状態にかぎりなく近づけられるからである。・・・・防腐処置による遺体の保存期間の延長を別にすれば、その目的は湯灌と同じ所にあるというのが、私の率直な感想だった。遺体を自然な形に戻して遺族に引き合わせ、旅立ちしていっていただく。それがすべてである。」(130)


以前、日本でのエンバーミングの第一人者 橋爪氏の書籍をレビューしました。
【書評】お父さん、「葬式はいらない」って言わないで 橋爪謙一郎

 

私は個人的に、こういうサービスがもっと普及すれば良いのに・・・そう思いました。死は辛く悲しいものですが、少しでもその衝撃を和らげることが出来る。そういう術には、お金にかえがたいものがあります。戒名や、お布施にお金を使うなら、こういうところにお金を使いたいと思ったのです。とはいえ、エンバーミングは20〜30万するそうですから、なかなかお気軽に実施とはいけなさそうです。湯灌は、どの葬儀社にもオプションでついていますから長く保管はできませんが、少しでも綺麗に遺体をしてあげたい場合の選択肢になってくるのかもしれません。

 

シンプルなお葬式では、
湯灌は27.000円〜38.000円ほどの
オプションの価格となっていました。

 

著者が書いているよりも、かなり安い・・という感じでしょうか。遺体の修復などは含まれていないでしょう。この金額では。湯灌は湯灌でも著者のサービスは少し特殊な感じがします。

 

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