エンバーミングは「儲からない」

エンバーミングは「儲からない」

このページは下記書評の一部です。
【書評】死体の経済学

 

私は、橋爪氏の本(【書評】お父さん、「葬式はいらない」って言わないで)を読んでからエンバーミングには非常に期待を寄せてきました。この種のサービスなら、葬儀業者が相当の金額をとってもかまわないとも思ってきました。しかし、事実からいうと、なかなか日本の葬儀業界にエンバーミングの波はこなさそうです。(すでに輸入されて20年近くたっているそうですが、それほど普及している風はありません、)

 

本書によれば、そこには「経費」の壁があるのだとか、やっぱそうですよね・・。

月に20体でも食べていけないエンバーミング事情

 

葬儀業者の経費
「月のさまざまな諸経費を含めると、エンバーマーひとりにつき100万円はかかる。大手ではだいたい最低で3名が常駐しているので300万円くらい」(大手葬儀社社員)

 

消費者が支払う金額
「およそ10万円〜20万円前後が一般的。日本遺体衛生保全協会では法外な処置費を請求しないように施工料の上限を15万円と定めているが、基本料金を10万円程度にして、メイク料などを上乗せして20万円くらいをとるのは珍しくない」(日本消費者協会)

 

かつて葬儀ビジネスといえば小さく注ぎ込み大きく稼ぐが原則だった。しかし、このエンバーミングビジネスは違う。大きく注ぎ込み小さく稼ぐ。だから受注数が多くないとまったく儲からないのだ。」(P66)

 

葬儀社にとっては、エンバーミングのメリットがない
「中小の葬儀社からすると設備投資やら人件費やらで数千万を先行投資しても、扱い件数も少ない上一体10万円ぽっちなら、元手がタダのドライアイスをこまめんい交換したり生花を使いまわして10万円を稼いだほうがよほどおいしい。公益社や全葬連が打ち出すエンバーミング推進路線に、いまいち業界全体が乗り気ではなく、なかには反対の声もあがっているというのはこの点が大きいんです」(P68)


消費者にとっては、10万〜20万でも十分に高いわけです。とくに日本の場合はすぐに火葬をしてしまいますから、それを考えますと、2日〜3日、遺体をきれいな状態に保つために、エンバーミングを施すか?というと、そこに踏み切る人は少ないでしょう。

 

アメリカではエンバーミングは安いところだと2万〜3万で行うようです。それでも、高いということで、最近は「火葬」が広まりつつあるのだとか。死んだ人にどれくらいの経費をかけられるかは、価値観しだいですが、数日のために数十万をかけるのはやはり難しいのかもしれません。それでも、葬儀社にとっては赤字案件。月に数十体、エンバーミングが無ければ、やっていけない。これでは広まりません。

 

私は別に、エンバーミング大使でもなんでもないのですが、もっとエンバーミングが普及するための方法を少し考えてみました(勝手に)。

「時間」を確保するためのエンバーミング

エンバーミングは「遺体修復技術」と「保管技術」からなっています。しかし、遺体の修復だけなら、湯灌師・納棺師も、遺体を数日の間「きれいな」状態に保つことは可能です。費用はおそらく3分の1程度で。そう考えると、数日間、遺体をきれいに保つというだけでは、エンバーミングは日本の葬送において主力の位置を占めることはないわけです。それで、やはり、遺族が「時間」をとることができる、というエンバーミングの大きな特徴である「保管技術」にもっと注意を引けたら良いのではないかと、私は考えるわけです。

 

「時間」という大きなメリットを打ち出す

 

「日本において、葬儀とは時間の戦いである。亡くなったらとにかく火葬場をおさえなければならない。それに合わせて会葬者に声をかけ、坊主や食事を手配し、通夜や告別式の会場を予約する。遺族はそのような慌ただしさに追われ「無事に葬式を出す」ということが最重要事項となってしまい、本来の目的である「故人の死」と向き合うということがじっくりできなかったというケースも多い。

 

ところがエンバーミングをすれば急いで火葬場をおさえる必要も、慌てて葬式の準備をする必要もない。最長50日まで保存できるからだ。火葬までのタイムリミットに縛られることなく、時間をかけて死に向き合い、哀しみを受け入れることができる。」(P76)


葬儀は日本においては、3日以内にだいたいのこと(通夜や告別式、火葬)済ませてしまう必要がありますが、それをもっと柔軟に、2週間以内にすべてを行う・・のように考えるとどうなのか?ということです。エンバーミングしてあるので、遺体は腐敗しません。ですから、時間をかけて葬儀の準備をし、故人と別れるのです。準備しイベントを用意すれば、ぼったくりなど生じることすらありません。すべては遺族の不準備、無知識を狙って仕掛けられるものだからです。もっと時間さえあれば、きっと葬儀業界も良いものになります。

 

決して儲からないとは思いますが、たとえば、亡くなってから2週間後の葬儀パッケージを葬儀社が打ち出すのはどうでしょうか。エンバーミングこみで。従来の葬儀費用と同額かかったとしても、十分納得の行くものだと思います。

 

以前、読んだ、葬儀会社ティアの創設者、冨安氏の自伝(【書評】ぼくが葬儀屋さんになった理由)には、極道の組長の息子さんのエピソードが載っています。

 

交通事故で突然亡くなってしまった20歳前後の息子さんの死を、組長も激しく嘆きます(怒りと共に)。それで、富安氏に、「遺体は最長どれくらい持たせることが出来るのか!」と恫喝するというシーンが出てきます。氏は、ドライアイスを入れ続けると、最長で10日はいけるのではないか!と目算するというシーンが出てきます。このときに、行われた葬式は800万を超えるものだったと言います。

 

 

それだったら、エンバーミングすれば良いのにと思ってしまいます。(このときは、まだそういう技術が一般的じゃなかったかもしれませんが)組長なら100万出しても惜しくないと言ったと思います。しかも、50日後に葬式なんて素晴らしいじゃないですか。おそらく数百万なら喜んで出したと思います。

 

人が亡くなってから、火葬するまでの時間、非常に短いのですが、別れを惜しむには、あまりに短すぎます。それが、遺族の悲嘆を大幅に増やしているのではないか、現実感が持てない状況に置き去りにしているのではないか、と私は常々感じています。

 

可能なら、私もそのようなエンバーミングには関心があるのですが、実際に自分の葬式ではしないと思います。家族の葬式では、それもアリだなと思っているのです。調べたところ、15万円程度で、エンバーミングを請け負う会社はあるのですが、私の地域でとなると、あまりありません。これは、贅沢なことになるのでしょうかね。

 

あわせて読みたい

葬儀屋さんと生前打ち合わせをしてみました。



 

これは、私の考えですが、葬式は儀礼を一切取り去り、
出来る限り「シンプル」にしたいと思っています。
私が実際に打ち合わせ、生前見積もりをした葬儀屋さんを
ご紹介いたします。メールのみでのやりとりも可能です。




直葬・火葬式可能なシンプルなお葬式プランが安い(資料請求)



スポンサードリンク

関連ページ

「儀式」に「意味」などない
「儀式」には、そもそも「意味」などないもの。カラクリを暴けば、みんなが不幸になる。葬儀業界の開き直りともいえる意見にびっくり。
葬儀に関わる「原価」と「不透明な価格」
葬儀にかかる費用の原価は?不透明な価格の実態に迫っていきます。ドライアイスの原価、祭壇の高額なレンタル料。