【書評】「葬儀」という仕事(小林和登)

【書評】「葬儀」という仕事(小林和登)

「葬儀」という仕事 (平凡社新書)

 

序章 おくりびとの一日/第1章 職業としての葬儀/第2章 やっぱり葬儀社は辞められない/第3章 葬儀をめぐる「ひと・もの・かね」/第4章 まっとうな葬儀をやりたい/第5章 葬儀で損をしないために

 

現在著者は、独立した葬儀社(東京フラワーセレモニー)の社長ですが、葬儀マンとしての長年の経験、しかも、相当成績のよかったトップセールスの経験から、葬儀屋さんを賢く使う術を教えています。美談に偏ることがなく、淡々とビジネスライクに葬儀に取り組む著者の姿が描かれており、そこに、業界のナマナマしさも見て取れます。

 

ある意味勇気のある告白ですが、一概に葬儀業界を批判するのではなくそこに積極的に加わっていた自分をしっかり含めて書いている姿勢は高く評価できます。それだけに、この内容って本物なんだろうなと思うのです。

 

この本の目的

 

「突然の悲しみ、故人のためにという思い、日常では感じることの出来ない高揚感・・・。そうしたさまざまな感情が交錯する中で、判断を迫られる儀式。だからこそ、不透明な仕組みがまかり通ってきた。今こそ、賢く葬儀社を利用するために、葬儀にまつわるメカニズムとからくりを明らかにする。」(まえがき)


著者は20歳前後で、バイトとして葬儀屋に勤め始めます。まったく、何のこだわりもなく、ただ良い給料がもらえるから・・・そんな気持ちだったようです。最初に就職した会社では、昼は会社で社員が麻雀をしていたそうです。会社に雀卓があったとか(笑

 

やがて、この会社はいきなり倒産するのですが、どうも一度入るとやめられないのが、葬儀屋さんなのでしょうか?著者は、若くして高給がとれるのはこの仕事くらいしか無いと思ったようですが転職してさらに忙しい会社に入った著者は、一気にトップセールスへのし上がっていきます。

 

葬儀マンが、自分の裁量で給与をあげていくノウハウなどを著者は惜しげも無く「公開」しています、そして、そんな過去を「後悔」しています。病院付きの葬儀社として、すでに葬儀社が決まっている喪家の決定をどうやって覆していくかというテクニックは生唾ものです。ある時期の、著者の感覚はなかなか割り切っており、怖いくらいです。(まるで悪徳業者?葬儀屋さんの手口

 

どんなに高い料金でもいいのではないか

 

「遺族の方たちの評価は、葬儀の価格の多寡ではなく、葬儀の満足感で決まるんだな、などと思っていました。遺族の方たちが納得し、満足のいく葬儀をプロデュースできるなら、どんなに高い料金にしてもいいのかもしれない。私はいつの間にかそんな思い上がった考えを持つようになっていました。」(P174)


資本主義的には、何も間違っていないのかもしれない。お客さんは喜んでおり、自分も儲けている。しかし、著者は、だんだんと良心的になっていくのです。

 

ありがとうのボディブロー

 

「やがて、こうした遺族の方たちの「ありがとう」の言葉が、だんだんボクシングのボディーブローのように私の良心に効いてきたのです。こんなに吹っかけているのにもかかわらず、遺族のみなさんは自分にこんなにも感謝してくれる。その気持を、当然のように受け入れていいのか。そんなことを感じるようになっていったのです。

 

いったん、そう思うと、葬儀の価格がはたして正当なものなのかという気持ちがわいてきました。僧侶をはじめさまざまな業者からやってくるキックバック、すでに原価を超えて使いまわしている祭壇や装具の代金、その一つひとつが真っ当ではないのではないかと感じるようになりました。」(P174-175)


著者は、やがて供花祭壇というシステムに出会ったことから、祭壇を激安で用意できることに気づきます。また、料金をガラス張りで、透明にしたシステムを打ち出すようになります。この方針が、やがて雇われていた葬儀社との軋轢を生み、独立を志すことになるのです。

 

前半の、やり手葬儀マンとしての著者の快進撃を読んでいるとこの人、良心あるのかな?と心配になってしまってましたが、人は過程を通して成長するのもわかります。

 

今では、確たる信念をもって、葬儀社を運営している著者ですが、若き時代の自分のカッコ悪い姿も正直に述べていることに好感が持てます。あえて、自分のストーリーを美化しない姿勢に、真実の響きがあります。このへんは、読み物として秀逸なティアの社長、冨安さんの著書とは大いに違うのですが、
書評 僕が葬儀屋さんになった理由

 

そのような違いを味わうにも、興味深い一冊となっています。

 

「葬儀」という仕事 (平凡社新書)「葬儀」という仕事 (平凡社新書)
小林 和登

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