【書評】僕の死に方 エンディングダイアリー500日

遺された奥様のグリーフケア

グリーフケアとは、家族の悲嘆を癒やすケアのことです。私はこの本を読んで初めて、その事実に気づきました。

 

 

今までは、葬儀やその周辺をシンプルに考えすぎていましたが、家族のための葬儀という位置づけもあるのだと。しかし、金子さんの場合は、普通の人の予想をはるかに越えていきます。葬儀の後に、虚脱感に襲われて「うつ」のようになってしまう遺族は多いようですが金子さんは奥様にあるミッションを与えます。死後のプロデュースの中でも主要なミッションです。

 

感謝の全国キャラバン

 

「地方の方は、通夜にも告別式にも、なかなか来られないだろう。わざわざ来ていただくのも心苦しい。だから妻には、「感謝の全国キャラバン」を頼んだ。お世話になった方々を訪ねて、その近所でお礼の食事会。すでに招待リストと店の指定まで終え、その予算も出した。もちろん、代理として行ってもらう妻の移動費も計上済みだ。」(P129-130)

 

「感謝の全国キャラバンなんて、くだらないことを考えていると思われるかもしれないが、これは今の自分にもできる、最大限のことなのだ。相手を喜ばせるための仕事を、今、私はできていない。その代わりに、葬儀と葬儀後をプロデュースすることで、相手に喜んでいただきたい。実際、こうしたプロデュース作業は楽しかった。自分の「死」にまつわることなのに、作業中、喜んでくれている相手の顔を思い浮かべて、笑みさえこぼれた。」(P130)


金子さんの性格を物語るようなエピソードです。とにかく、人の喜ぶ顔を見たい、できるだけ多くの人に笑顔になってほしい。

 

自分の「死」という最高のイベントを、恩返しの時間にしたい。

 

そして、それを金子さんは奥さんに託します。実は、これが、奥さんにとっては最高のグリーフケアになりました。金子さんが亡くなった当日の、ことを奥様があとがきで
こう書いています。

 

 

「ありがとう、お疲れ様。私は金子に声をかけていました。目から涙が流れてきたけれど、泣いているのとは違います。
・・・
「これから始まるんだよね。今から、哲っちゃんが用意したことをはじめないといけないんだよね。今までありがとう。じゃあ私、これからやるわ」きっと切り替えの涙だったのだと思います。(P187)


亡くなった時から、葬儀、そして感謝の全国キャラバンを始めるための新たなスタートをきることができたのです。ここまで、配偶者のことを考える人はめったにいませんし、
金子さんご夫妻は、ほんとに似たもの同士というか似合いの夫婦だったと感じます。

 

この全国キャラバンが、奥さんが立ち直る機会になったことは終活雑誌ソナエで書かれていました。

 

「遺された私が悲しみから立ち上がり動き出す力まで与えてくれるミッションでした。たとえば、全国にいるお世話になった方々へのご挨拶などは、夫を喪ったダメージがまだ大きな頃で、心身ともに厳しい作業でしたが、電車や飛行機に乗って移動すれば、環境も代わって、悲しみを抱えていても気分転換になりました。

 

初めてお会いする方々から生前の夫の生き生きとした様子をうかがい、新たな悲しみを感じることもありましたが、同時に皆さんからの温かい気持ちを受け取り、自分の中に力が溜まっていくようにも感じていました。」(ソナエ春号2014 P37)

 

 

金子さんがここまで、考えて、奥様に感謝の全国キャラバンを頼んだとしたら、すごいことです。でも、金子さんなら、そうしたかもしれないと思わされます。

 

自分の死後のことを考えることには、
遺された家族がどのように悲しみから立ち上がることが
できるかを考え、それを計画することも含まれる

 

ということを初めて知ることができました。

 

私も同じようにできるだろうか。ただ、ひとつ言えるのは、感謝の全国キャラバンは、最高のアイデアだったということでしょう。その後、奥様の雅子さんは、闘病記なども書記されています。決して、悲しみが癒えたわけではないにしても、力強く、悲しみの時を乗り越えていく姿に励みを受けます。

 

 

 

小まとめ

「僕の死に方」の最終部分にあるのは、遺族のためのグリーフケアです。感謝の全国キャラバンという、関わった人すべてと奥様のための、最後の「儀式」を用意した金子さん。多くの人と関わり、その中で、悲しみや痛みは、少しずつ除かれていくもの。新しいグリーフケアの形を想像させてくれる方法です。

 

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