【書評】僕の死に方 エンディングダイアリー500日

自分自身の葬儀のプロデュース

金子さんの最後の大仕事は、自分自身の葬儀の準備(プロデュース)でした。

 

そこには、消費者の求める情報を出来る限りわかりやすく語り続けてきた流通ジャーナリストの意地が見え隠れします。

 

一生に一度のプロデュース

 

「やり残したことはわかっていた。死んだあとのことだ。まがりなりにも、「流通ジャーナリスト」として情報を発信してきた。自分の最期、葬儀も情報として発信したいと思った。賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする。自分が何度も口にしてきた台詞だ。葬儀は、人生の幕引きだ。これも含めて、人生なのだ。その最後の選択を間違えたくなかった。私は自分の最期を、最後の仕事として、プロデュースしようとしていた。」(P124)

 

「なぜ自分の葬儀に真剣になるのか。・・・たとえば、「結婚は一生に一度」と言って、だれもが張り切って結婚式をプロデュースする。結婚式をあげた人なら誰しも、パートナーとああでもない、こうでもないと相談した経験があるはずだ。・・・では、葬儀はどうか。これは間違いなく、「一生に一度」だ。しかも葬儀には、当の主役がいない。・・だから主役の意思を生前に確認しておくことが大事なんじゃないか。私はそう考えた。どうせ意思をはっきりさせるなら、ついでにプロデュースしてしまえばいい。そう思ったのだ。」(P138)


賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする。

 

これが金子さんのモットーであり、それを最後の「葬儀」という自分にとっての最後の「儀式」に反映させていこうとします。

 

ひとつの大仕事(本の執筆)を終えた後、金子さんは危篤状態に陥ります。奇跡的に命をとりとめましたが、その時から、どのように死ぬか、「死に方」に正面から向き合って生きるようになります。実際、この本は、危篤状態から回復し、実際に亡くなるまでの1ヶ月で書かれました。単に家族に遺書を書くのではなく、それをこれから経験するであろう人へのいわば「お買い得情報」としてちゃんと書き留めておくこと、これこそ金子さんの最後のお仕事だったのです。

 

闘病記・死への準備を一冊の本にまとめるという仕事

 

「病気の発覚から、現代医療が抱える問題点、がんやカルチノイドの治療情報の集め方など、思いのたけを1冊の本にまとめる作業にとりかかった。40代で死ぬということがどういうことか。妻のために準備しておくことはないか。気持ちにはどんな変化があるか。それを残しておきたいと思った。」(P151)

 

「私は「流通ジャーナリスト」を目指した初心を思い出していた。誰かに喜んでもらいたい。それが自分の信念だったではないか。たとえ死ぬからと言って、嘆いていても、だれも喜びはしない。周りが暗く沈むだけだ。だったら今、自分のできることをしよう。それには、仕事先のリクエストにきちんと応えることだ。相手が100を望むなら、120で返そう。今まで以上のパフォーマンスを見せよう。仕事に集中しているときは、その間、私の中の恐怖を忘れることができた。」(P144)


人生のエンディングを自分で決めたいと思う人にとって金子さんが残してくれた手記を読むことは、何をどこからはじめ、どんな選択肢があるかを知る助けになると思います。

 

私自身、終活本を大量に読んできましたが、いざ、自分が逝き方を考えるときに、何から手を付けるかはおそらく、動揺の中、迷ってしまうと思います。そこで、金子さんの情報が助けになるわけです。

 

金子さんがまず取り組んだのは、遺言の作成です。

 

しかも、後々もめないように公正証書遺言の作成を知人の弁護士に依頼します。これまで、私が調べてきた知識によると、だいたい公証人立会のもとでの遺言作成には3万5000円ほどがかかるようですが、金子さんによると、出張料金も記されています。さすが、価格情報の専門家です。

「公証人の出張料金は9万6000円。「高い」とも思ったが、法的にいい加減な遺言を残して、のちのち揉めないようにするためだと思えば高くない。」(P126)

 

知人の弁護士からは、故人が亡くなった後に、家族でもめる多くの問題を聞きます。

 

たとえば、葬儀費用を誰が持つのか?ということでももめる場合があるわけです。故人の資産から出すのが当然と考える人もいますが喪主が出すのが当然と考える人もおり、相続の問題も絡むと、ここで一悶着起こる可能性もあるということです。それで、金子さんは、まず費用をしっかり見積もって、葬儀資金を取り分けていきます。

 

葬儀費用を自分で支払う

 

「葬儀の準備もしっかりやっておきたかった。「しっかり」というのは「盛大に」という意味ではない。残してしまった妻や、関係者に迷惑がかからないように、きちんと手はずを整えたかったのだ。まず、お葬式の費用はすべて私が自分で出したかった。死んでしまうと、口座はロックされてしまう。だったら、かける費用を見積もって、その分を先に妻の口座に移しておく。」(P127)


葬儀会社を選定し、生前見積もりを取り、実際の葬儀の手配をします。葬儀の進め方の打ち合わせ、できればシナリオも構成作家に依頼しようとしたが、それは止められたとのことです。

 

骨をどうするか、葬儀会場、霊柩車、死に装束、遺影、細かな点まで、話を詰めていきます。本当に結婚式みたいですよね、奥様と二人で話し合いながら最後のセレモニーをどうしていくのかを徹底的に決めていくのです。奥様のあとがきによれば、金子さんは、死んだ直後の指示も与えていました。

 

死んでも、救急車を呼んではいけない

 

「金子からは「僕が死んでも、救急車を呼んではいけないよ」と、口酸っぱく言われていました。病院での死はそのまま扱われますが、在宅で死を迎えた場合、救急車を呼んでしまうと不審死扱いになってしまい、その後が面倒になるというのです」(P188)


実はこれ、私も経験していますが、もう老衰と言えるようなおばあちゃんが亡くなった時のことですが、自宅で、そのまま眠るように亡くなりました。同居家族が朝に起きて、第一発見者でしたが、119番したため、不審死扱いになり、警察がやってきて自宅はものものしい雰囲気になりました。遺体はすぐに検死されてしまいました。

 

そして遺族には、何度も何度も、尋問のような聞き取りがありました。のちになって、「警察は私が遺産目当てで殺したと思っているんだわ」とその方、言ってましたが(ありえないですが)、それくらい最後が騒然としたものになってしまうのが、自宅での「死」の現実なんですね。

 

かかりつけの医師を呼んで、死亡診断してもらえばそのすべてを避けられますので、これを金子さんがちゃんと事前に知っており計画していたのはすごいことです。最後の最後を本当にコントロールしていたのです。しかも、その最後にあたっては、死亡診断書の内容まで指定したという話には落涙します。

 

死因は肺カルチノイドということで

 

「死亡診断書も、どう書くのか、本人と先生の間で話し合いが進んでいました。死因をカルチノイドにしてほしいと、金子が先生に頼んでいたのです。「曲がりなりにも一応、少し名が知れていると思うので、僕の死が少しでもニュースになれば、カルチノイドという名称が皆さんの目に触れると思うんです。だから死因は肺カルチノイドということでお願いします。」死亡診断書まで自分で考えていたのです。」(P189)


これから先、肺カルチノイドで戦わなければならない多くの人のため。

 

その病名の知名度をあげるための、いわば「プレスリリース」です。

 

最後の最後を自分で決めていくというその生き方、逝き方には深い感銘を受けざるを得ません。これは遺された奥様への深い愛情も感じられます。今わの際であっても、自分の体調というだけではなく、その後に起こることに思いを巡らし続けていかれたからです。

 

金子さんは想像力が豊かです。

 

実際、こうした死後のプロデュース、葬儀の準備、本書の執筆のために医療用麻酔を極限まで減らし、痛みと闘いながら仕事を行ったそうです。(麻酔を打つと朦朧とするため)

 

自分が同じ立場になったら、同じようにできるだろうか・・・ただ、そのように考えるのではなく、同じ立場になったときに、先を歩いて見事に成し遂げた先人がいるということが素晴らしいことだと思うのです。金子さんはもういませんが、金子さんが遺したものは数限りない人が人生の最後を見事に締めくくるために役立つのです。これこそ、金子さんの目指していたものではなかったでしょうか。その願いが見事に果たされたのです。

 

小まとめ

人生の最後の仕事は、自分の死のプロデュース。葬儀から墓、死後の家族の世話まで、すべてを自分で計画し、実行することができるということを金子さんの手記は教える。思えば、私たちの誰も死に向かっているので、自分の生きざまをしっかり考えそれを計画することは、いかに生きるか、そのものなのだ。

 

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